コンテンツへスキップ

東京スピニングパーティー2024 出店者レポート④

10月5日・6日、横浜産貿ホール マリネリアにて開催された「東京スピニングパーティー2024」(以下、スピパ)。手仕事に関わる素材屋・道具屋・作家などが全国各地から、そして海外からも集まりました。今月と来月の2ヶ月間に渡り、個性豊かな約80ブースのレポートを全4回でお届けします!

前回のイベントレポート③に引き続き、今回の記事ではブース61〜80のお店や商品の特徴、スピパ当日の様子についてお伝えしていきます。

61.澤口弘子

大自然豊かな北海道で育った羊を自然素材で染めたニットやベストが並ぶこちらのブース。市販のスライバーを使わず、毛刈りから自分で行うこともあるのだそうです。染めには、コスモスやミョウバン、泡立草、クリの葉など、北海道の自然から採れる身近な素材を使用し、優しい色合いを表現しています。作家ユニット「Simple風」では、編み物が好きな仲間が集まり、普段は完全受注生産で丁寧に仕上げています。

62.Quality Yarn Down Under

ニュージーランド産の羊毛を使った糸が並ぶこちらのブース。現地に住んでいた社長が「良い物を日本に広めたい」という思いで10年以上にもわたり販売を続けてきました。ポッサムの毛をウールに混ぜた「ポッサム・メリノ」を日本で唯一の取り扱っており、初日にはほとんどが売れてしまうほどの大人気でした。軽くて暖かい着心地が魅力で、環境にも優しい素材です。

63.まかいの牧場

静岡県富士宮市にある「まかいの牧場」は、若い世代を中心に大人気のスポット。牧場のレストランで使用した玉ねぎやみかんの皮など、通常は廃棄されるものを使って染められた羊毛は、たくさんの要望を受け、スピパ限定で特別販売されました。牧場のアイコンでもある、全身羊毛でできたズース人形も展示。牧場の魅力が感じられる、心温まるブースでした。

64.日本モンゴル遊牧民会

オリエンタルな香りが漂うこちらのブースでは、モンゴルの民族衣装を纏った女性がお出迎え。日本とモンゴルの架け橋となる活動を行う「日本モンゴル遊牧民会」の展示です。ブースでは、広大なモンゴルの草原で育まれた羊やヤギの油と、野生植物を手作業でオイルに加工した石鹸やボディオイルをご紹介。すべてフェアトレードで取り扱われており、顔から足の先まで使えるお肌に優しいアイテムです。

65.スピンハウスポンタ

羊に関する多岐にわたる活動を行う本出ますみさんによるブース。原毛の輸入販売や雑誌「SPINNUTS」の発刊、本の出版、さらに「ジャパンウールプロジェクト」の開催など、羊に関する多岐にわたる活動を続けている本出さんを訪れるため、ブースには多くの人が足を運んでいました。特に「羊の本」は本出さんの情熱が詰まった一冊。詳細かつ豊富な情報量は圧巻です。衣類や食肉など、羊に携わるあらゆる人々が手に取っていただきたい一冊です。

66.フリースタイルあばりあみ

「あばり」は、網を作るための道具ですが、そのあばりを使って、かわいらしいグッズが簡単に作れます。編み図を必要とせず、体に巻きつけるようにして編んでいくフリースタイルな方法で、結び方さえ覚えれば、様々な素材を使って洋服やアクセサリーなど、お気に入りのアイテムを作ることができるんです。初心者でも気軽に取り組め、自由な発想で思いのままにものづくりを楽しめるのが魅力。かわいらしいニットやベストなど、作りたいものを好きな素材で作り上げる、自由な要素が満載の「あばり編み」を体験できる、楽しいブースでした。

67.お休み

68.いわぬまひつじ村(公社)青年海外協力隊

宮城県岩沼市で障がいを持った方々とともに羊の飼育を行っている同団体によるブース。ハサミだけでかわいい羊のマスコットが作れる「ボンボン羊」をはじめとするかわいいオリジナルグッズがたくさん並んでいました。震災の被害を受けた土地での羊の飼育と復興の様子を描いた文章がプリントされたTシャツも展示され、被災地のことを多くの人に知ってもらいたいという強い思いが伝わってきました。

69.あすなろ東京

人々の生活に身近な木について広める活動をする「あすなろ東京」のブースは、木の温かみを感じられ、そこに居るだけで癒される空間が広がっていました。ディテールが非常に細かい木製の切り絵の美しさ、詰め放題のパーツも種類が豊富さ、木のチップの香りなど、木材の持つさまざまな魅力を存分に感じられるブースでした。

70.北里大学

キャンパス内の農場で学生の実験実習用・研究用として羊を飼育している北里大学。そこで生産された毛を持って、スピパへ参加していただきました。中でも注目を集めたのは、希少種であるマンクス・ロフタン。レアシープ研究会と協力して種の維持・保存のための取り組みを行っています。ブースには、珍しいマンク・スロフタンの毛を求めて多くの人が集まりました。愛らしい羊と四季を楽しめるフォトポストカードも素敵でした。

71.茶路めん羊牧場

「日本の牧場で採れた羊毛を多くの方に手に取ってもらいたい」という思いで出店された茶路めん羊牧場。「いただいた命を無駄にしない」という思いを大切に、日々羊と向き合っています。ブースにはたくさんの人々が訪れ、羊についての話が尽きなかったそう。オーナーが執筆した羊にまつわる絵本や料理本、牧場で採れた羊毛を使った色とりどりのグッズが展示され、目を引くブースとなりました。

72.あきた牧場

あきた牧場の今回のコンセプトは「オール秋田」。牧場の羊毛をはじめ、地元の作家さんによるレザーや草木染めの作品など、秋田の魅力が詰まったブースとなりました。会場内では「かわいい!」という声があちこちで上がり、大好評。自慢の羊毛も、2日目にはすでに完売してしまったそうです。「発展途中」と話す羊飼いの武藤さん。今後の活動にも注目です。

73.チェビオット大沼羊牧場

様々な色の羊毛が展示され、モコモコに溢れたこちらのブース。刈り取る際に混ざるゴミを残したまま糸紡ぎ用として販売し、ただきれいなだけじゃない、羊毛の自然な部分を伝えています。お客様にとって、その自然な部分も魅力の一つ。柔らかくチクチクしない毛は大好評でした。今後も「羊毛の暖かさ」を大切にし、魅力を発信していきます。

74.未来の担い手支援機構

未来の農業や工業を支える人材を育成するため、農業高校の実習をサポートしているNPO法人・未来の担い手支援機構。農業は人手不足が深刻ですが、新しく始めるには高いハードルがあるのも現状です。そこで、農業を目指す若者たちの夢を応援するため、実習先の紹介やメンタルサポート、キャリアアドバイスなど、さまざまな支援を行っています。展示されていた資料からは、20年後には農業人口が全体の0.2%未満になるという衝撃的なデータも明らかに。日本の未来の食料供給について改めて考えさせられる内容でした。

75.安彦美里

大学4年生の安彦さんによる植木鉢の出展。実はこの植木鉢、羊毛でできているんです。特別な機械で圧縮し粉にした羊毛と再生土を混ぜて焼くと、羊毛だけが焼け消えて、ポツポツと穴の空いた植木鉢が完成します。大学で生け花や陶芸を学び、羊が大好きな安彦さんが、学びと好きなものをかけあわせて考案したこの植木鉢。来場者と話す中で、新しいアイデアも生まれたそうです。卒業後も、作品制作を続けたいと話す安彦さんの今後にも目が離せません。

76.東京牧場

スピパ事務局の運営を行う東京牧場株式会社。ブースでは自社農場の紹介ほか、会場奥の休憩スペースでは出店者の皆さんと来場者の方に向け、ドリンクのサービスとリーズナブルなスイーツの販売を行っていました。開催1日目には、代表の中川利光さんが開催地・横浜のコミュニティーFMへ生出演し、スピパと手仕事の世界を地域の方へPR。参観日のお父さんのような、会場全体を温かく見守る姿が印象的でした。

77.COURONNE de SAISON

東京檜原村の間伐材を使ったリース作り体験と、アーティフィシャルフラワーのグッズ展示が行われました。普段は横浜市の教室「森のワークショップ Natree(ナチュリー)」でリース作りを教えている先生が、今回のイベントでもブース内ワークショップを開催。多くの人が参加し、ブースは常に満席でした。作品作りの際は「好き」という感覚を大切にしているそう。その「好き」の気持ちが、ワークショップを通して多くの人に連鎖しているようでした。

78.Amuu

編み物が大好きな作家さんによる、ぬいぐるみやグッズの出展ブース。ケーキなど、他ではあまり見かけないモチーフが印象的でした。作品を作る際には、使う人のことを考え、シンプルでかわいいデザインを心がけているそうです。また、なるべく自然の素材を用いて環境にも配慮しています。オリジナルの可愛らしいグッズが並ぶブースは、見ているだけで楽しい気持ちにさせてくれました。

79.NAMIchanchi久保奈美絵

色とりどりの糸や布が並び、柔らかくて可愛らしい世界観が広がるこちらのブースでは、草木染めのワークショップや糸の販売などが行われました。スタッフさんたちが着ていたオリジナルで染めた色違いのワンピースもとてもキュート。主催の久保さんのテーマは「愉しむ」こと。あまり作り込もうとせず、居心地の良さを大切にする中で自然と形作られていったそうです。その自然体な様子が多くの人を惹きつける作品につながっているのを感じました。

80.アトリエ虹色工房

女性物理学者による、アクセサリー展示。宇宙のような黒の背景に色鮮やかなアクセサリーが並ぶこちらのブースは、他とは一味違った雰囲気でたくさんの人を惹きつけていました。草木染めの糸で作った手作りのアクセサリーは眺めているだけでうっとりとするほど緻密に作られていています。一つ一つの作品にはコンセプトがあり、原始起動をイメージした「オービタル」や「オーロラ」など、神秘的な作品が並びました。

おわりに


4回に渡ってお届けしたスピパ出店者レポート、いかがでしたか?
20回目のアニバーサリー大会である東京スピニングパーティー2024では、お馴染みの出店者さんの素晴らしい作品や素材・製品はもちろん、手仕事を原点に様々な分野の作家さんや生産者さんなどがブースを構え、より世界の広がりと手仕事の「あたたかみと懐の深さ」を感じました。
2025年の開催日は、10月18日(土)、19日(日)。変わらずそこにあるものづくりの世界と、環境保全や地域との繋がりが手仕事を通して紡がれていくスピパ。今から秋が待ち遠しいですね!

(◇取材・写真・文:辺見美咲  ◇デザイン・編集:スピパジャーナル編集部 )